あのね? えっとネ?
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 
 


さて、この冬はとんでもない風雪に見舞われ続けの日本列島であり。
路面凍結でスリップや転倒へご用心と言ってたものが、
二度目の豪雪はもうもうそんなもんじゃなくて。
高速道路での長距離トラックの立ち往生が3日も続いたり、
そんなせいで流通がマヒして、
コンビニやスーパーなどという店頭に
パンや牛乳お豆腐野菜などなどが届かない状態になってしまったり。
車そのものが雪に埋まってて出せないご家庭も出るわ、
里が丸ごと孤立してしまう事態も頻発。
また、雪が水気を含んでいたせいで、
体育館や駅、バス停や駐車場の屋根や庇が
積雪の重みに耐え兼ねて落ちたという事故も起き、
そうかと思えば緩くなった雪の屋根からの落雪も多発して。

 「あの夏のメモワールに対抗したいとしか思えませんよね。」

ちょっぴりふんわりした肉付きの手で握ったシャープペンシルを、
カリカリカリ…とノートへ軽快に走らせつつ。
そんなお言いようをするひなげしさんなのへ、

 「???」
 「やだ ヘイさんたら、それってボンちゃんのあれ?」

通じなかったのが紅ばらさんなら、
あっはっはと楽しそうに笑ったのが白百合さんという
取り合わせなのも相変わらずで。
グラフが出て来る関数以外の数学は任せての、
紅ばらさんこと三木さんチの久蔵さんは、
あんまりアニメには詳しくないらしく。
古文は得意だけど英語はちんぷんかんぷんなのという、
白百合さんこと草野さんチの七郎次さんは、
少年まんがの『ワ○ピース』もしっかり読んでいらっさるらしい。
そしてそして、そんな話題がひょいと出て来るあたり、
此処は教室でもなけりゃあ、街角のおしゃれなカフェでもなくて。
花柄の大布団をかけたコタツを三人掛かりで取り囲み、
教科書や便覧、問題集にノートやマーカー、
消しゴムにペンケースなどをばらまいて、
ただ今、三学期の最後を飾る期末考査と対戦中。
家庭科の栄養学では何とか暗記した範囲が大当たりしたので安堵したものの、
日本史と地理は関心の度合いに差が出たか。
ばかやろー解散なんて知らないったらと、
膨れたひなげしさんは散々だったらしいが、
イチゴとみかんの産地はお任せvvだった白百合さんは笑顔で終えており、

 「………。」

日本も世界も、ちょっと過去も現在も、
大して変わらない把握らしい、
実は一番深窓のお嬢様な紅ばらさんは黙して語らずだったとか。(う〜ん)

 「うう〜〜、ちょっと息抜きしませんか?」

息を止めての全力疾走でもしていたかのように。
カリカリカリカリ……っと、かわいらしい字で埋めていたページ、
そしてが何度も出て来るに至り、
あああ、こりゃいかんと感じたのだろう。
英会話は得意だが、長文翻訳は内容によっての波があってというひなげしさん。
うう〜〜んと背伸びをすると、そのまま身をよじり、
コタツの傍らに持って来てあったポットと茶器を引き寄せて、
お茶 淹れ直しますよとあとの二人へ声をかける。

 「アタシも、渋〜いのがほしい〜〜。」

とは、化学の塩基がどうしても覚えられなくてと、
単語帳をぎゅむと握りしめてる白百合さんが、ちょいと低い声を出し。

 「……。」

自分も頂戴ということか、
マグカップに残っていた冷めてたお茶を飲み干そうとする紅ばらさんなのへは、
ああそのままでいいですよと、
カニの殻捨てのツボを見せてやる平八で。
そこへ捨てるからとカップを受け取り、手慣れた所作にて急須を傾けつつ、

 「あちこち雪でさんざんだったのも、
  何とか収まりそうだそうですね。」

そんな時事ネタをホイと振る。
ウチもね、鍋物の野菜が急に出回らなくなったもんだから、
ゴロさんがあちこちの菜園を回ってて。
値段はしょうがないけど萎びてるのは使えないしって、
素材集めに四苦八苦しててと、
実は関係なくはなかったのよと続ければ、

 「兵庫も…。」

雪で転倒とか、ヒートショックで意識不明という危険な症例などなどへ
呼ばれたケースも勿論多かったけれど、

 「車の後押しを やたらしたような印象が。」
 「あらまあ。」

いかにも文化系の見かけなお人なのにね。
あ、でも体力はあるんでしょう?
お医者様ってスタミナとスプラッタが平気な度胸がないと
やってけないって聞いたことあるしと、七郎次が尋ねれば。

 「……。(頷、頷)」

あれで結構 力持ちだしと言い掛かり、

 「〜〜〜。///////」
 「あー、何だ何だ久蔵殿vv」
 「真っ赤になって怪しいぞ?」

不意に噤んでしまったそのお口、これのせいだとしたいのか、
スティック状のチョコレート菓子をポリポリと齧り始める可愛さよ。

 「雪と言えば、先週のバレンタインデーで。」

今回の大雪のその最初、
選りにも選って、少女たちの冬の祭典、
告白の日…というよりも、世界のチョコが集まる日と化しつつある(おいおい)
聖バレンタインデーとがっつり四ツになってしまったものだから。
彼女らの通う丘の上の女学園なぞ、
警報が出る前に休校となってしまったほどだったし。
そうとまでは行かずとも、
想うお人に逢うのに相当苦労したカップルも少なくはなかったとか。

 「そういやウチも、
  試験開始の月曜って後出しで、
  山ほどチョコが飛び交ってましたものね。」

勿論…というのも何だが、
学園の人気者であるこちらの三華様がたへも、
部の後輩からは元より、
下級生や上級生、同じ学年の自称“ファン”の方々からまで、
結構な数をいただいてしまい。
一人一人からは こそこそで収まっても、
さあでは帰りましょうかという時分になると、
結構大きめの紙袋がパンパンになるほどもの量が集まってたとか。

 「試験開始日って持ち物じゃあなかったですよね、あれは。」
 「そうそう。」
 「アンダンテのアソート…。」

そうそう、あれっ!
美味しかったぁvv 限定品にもなるわよ、うん…と。
ちょっぴりと脱線するのもいつものことで。
そんなお陰様で触れられずに済んだ白百合さんの当日はといえば。

 高額な日本画の窃盗団を相手に、
 流通経路を絞り込んでた島田警部補が。
 此処へ着目しないでどうするかの草野刀月画伯のお宅へ、
 盗聴器が仕掛けられた疑いがあるとの報を受け。

あの大雪の中、
シロアリ駆除業者に扮した鑑識班を引き連れて、
広大なお屋敷のあちこちをこそりと大胆に(?)探査して回ったのだとかで。

 『…窃盗団って言っても。』
 『うむ。完成品が欲しいのならば、
  当家を狙うのは順番がおかしいのではあるがな。』

商品が欲しくて製造工場を狙うのとは事情が異なる。
造幣局を襲っても日によっては検品前のお札のほうが多いように、
銀行員の寝起きする独身寮を狙っても両替すら侭ならないように。
作家の家に完成品が必ず置いてあるとは限らない。
アトリエが別な画家も珍しくはないし、
日頃からも、
インスピレーションに招かれての製作をこなす場合がありましょうが、
たいがいの場合、注文依頼を受けて、
若しくは科展や個展に向けてという製作作業になるものだから。
常時という格好で、
代表作や新作が自宅になると思うほうがおかしいのだが、

 『そこで問題になるのが盗聴器でな。』

七郎次お嬢様も知らなんだのだが、
確かにお父様は、依頼を受けてのこと、
既作品と対になる新作を先月から描き始めていらしたそうで。
その参考にするためにと、依頼者から既作品も借り受けていたのだという話。

 『…そんな情報、どうやって。』

いやいや、私はホンットに関心がないので知りませなんだが、と。
父上が肩を落としそうなことを力いっぱい言いつのる困ったお嬢様へ。

 『盗聴器を仕掛けておいて、
  刀月氏の製作依頼などなどの情報を集めている一味があると。』

 『良親様からの情報ですね。』

もうもう何で先に知らせてくださらないものか、と。
口惜しそうに表情を険しくするお嬢さんだったものだから。

 “そこでそう憤慨するかね、お主。”

警察に任せようという習慣的判断は もはや皆無かもしれない、
困った癖のついているお嬢様なのへ、
お髭の上でお口をやや曲げてしまわれた勘兵衛だったのへ、

 『あ…。///////』

ほわんと頬を染めてしまった、
金髪色白、しかもしかも飛びっきりの美少女なお嬢様。
ああそうだったと、白い手へ提げていた紙袋を差し出すと、

 『これ。今日中に渡せてよかった♪』

一月からこっちのほとんどの放課後を使い、
頑張って編んだ、浅いカーキイエローのカーディガンと、
久蔵と一緒に作った生チョコレートをどうぞと差し出し、
ますますのこと真っ赤っ赤になっちゃったお嬢さんだったのへ。
作業に来ていた鑑識班の皆様が“あらまあ”と意味深に微笑ったその途端、
ピピーッと探知機の警報が鳴った間のよさよ。

  何事もないまま春を迎えられたらいいですねと、
  父上の画室に広げられてた下書きの白梅の枝先で、
  かわいらしいウグイスが小首を傾げてござった、早い春の一幕でした。





    〜Fine〜  14.02.19.


  *その昔、両親が住み込みで賄いと冷暖房の管理をしていた
   某銀行の独身寮の受付に、
   両替をしてほしいとやって来た人が本当にありました。
   いや、銀行の寮だったからって訳でも無さそうでしたがね。

   それはともかく。

   すったもんだのバレンタインデーも、
   いいことあったお嬢さんたちなようで。
   後は試験をクリアして、嬉し楽しい春休みゲットだ!
   (頑張れ〜vv)

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